『アキバ妄撮』をもらって思い悩んだ話~決着篇! 有村悠(イラストレーター&ライター)×もふくちゃん(『アキバ妄撮』をありむーに渡した秋葉原ディアステージ社長)長編対談実現!

もふく「コミケとかに来ている男性だって女の子が好きなんですよね。怖いって言いつつも、結局は女の子が好きでしょう?でも、そこがこちらとしてはとまどいポイントだったりして。目を合わさないで同人誌とかを買っていくけど、じつは横からずっと見ているみたいな(笑)。見たいの? 見たくないの?っていう。それがいじらしくて好きではあるんですけど」
有村「どっちかって言うと、見てもいいんですか?って感じなんですけど。見ても怒られないかな?とか」


下記ブログ記事「『アキバ妄撮』をもらって思い悩んだ話」がツイッターで話題沸騰!
http://lunaticprophet.org/archives/5405

ceron.jpでのこの件のツイッターTLまとめ
http://ceron.jp/url/lunaticprophet.org/archives/5405

「女の子が空から降ってくる」ラノベやアニメ文化にどっぷり浸かった有村悠(イラストレーター&ライター)に
とって「絶対領域」の先を下着を見せる『アキバ妄撮』は否定の対象・・・。

それに対して萌えを女子目線からビジネス化しているもふくちゃん(秋葉原ディアステージ社長)はアキバの住人が
「有村的アレルギー」を起こすことも、折り込み済みで『アキバ妄撮』の企画をGOした・・・。

そんな『アキバ妄撮』賛否両論の両極がついに直接対話!

有村悠×もふくちゃん"『アキバ妄撮』は是か非か?"対談!


有村「“お前は今の時代に何を言っているんだ?”って言われるかもしれないけど、最初に僕が思ったのは“はしたない”だったんだよ」


もふく「『アキバ妄撮』をめぐっての論争は、とにかく対談しなきゃっていうか、やったら単純におもしろいなって(笑)」
有村「これはもう、対談で落ち着くのが一番早いんじゃないかと。もふくちゃんに『アキバ妄撮』をもらって、とまどっちゃったんだよね、やっぱり」
もふく「でもさ、ディアステのお客さんの反応としても少なからず“クラスメイトが脱いだ”みたいな、身近な女の子が卒業後デビューして脱いでいたみたいな、 ガーンっていう気持ちを感じている人もいなくはないと思うんです。その点ねむちゃんは、 “私が選んだ道だから!”って。やらされてるっていう感じだと切なくなるけど、自分で選んで能動的にやっているんですっていうのをすごくアピールしていたんですよね。男に無理やり脱がされているんじゃないんだ よっていう」
有村「それじゃあ気になるのは、なんで能動的に選んだかってことなんですけど……」
もふく「私は、ここ数年仕事をしていて一番思ったことが、男は結局、自分が思っている以上に女を原動力に生きているんだなってことなの。例えば働くことの理由とか、生きることの理由とか、本当に人生の根本的な生き方が女の子に動かされているんだなって」
有村「女の子が動かしているの?」
もふく「うーん……いや、そういうわけではないと思う。男は女の子を見て動いているっていうだけで、別にそれを利用している女の子もいれば、何も考えていない女の子もいるし、女の子側もいろいろあるんだけれど、私が思っているよりも男の人っていうのは女性に依存しているんだなって、ビジネスの視点で見てより感じた」
有村「依存ねぇ……」
もふく「まあ、依存って言うと語弊があるかもしれないけど、本当に好きなんだなぁって。仕事ひとつをとってみても、かわいい女の子がいるといい方向に動くし。仕事を頑張るのも、“お金がほしいから”で、それは“なんで?”って聞くと“女の子にモテたいから”。“車がほしい”“なんで?”“モテたいから”。全部それなんですよ。でも、有村くんみたいな“そうではないんだよ!”っていう人に対しては、『妄撮』のような女の子のエロみたいなものがまた別の作用の仕方をするのかなって」
有村「うーん、いろいろ思うところはあったんだけれど……男のそういうところを利用するって意識は、今回の『アキバ妄撮』をやったときにはあった?」
もふく「そうだね。マスに訴える最も普遍的なものって、やっぱりエロっていうキーワードだったり、エッチなものだったりするから。伝達が速いよね」
有村「まあ、すとんとくるよね」
もふく「そうだよね。私がやっていて思うのは、アキバ系とかアキバのものっていうのはようやく世間的にも認められつつあるんだけど、やっぱりまだ依然としてニッチなんだということ。これだけネットの時代って言われていても、まだ一般層はみんなテレビを観ているから。誰も知らない、“ああ、あるよね、オタクの”とかニッチな知られ方をしているんだけど、“かわいい女の子”“エロ”“水着”“脱ぐ”っていうキーワードは、もう驚くほど説明がいらなくて。その伝達力の速さっていうのはやっぱり使わないといけないし、これからは、閉じこもっているよりかはいろいろな人に見てもらいたい。ある意味、悪い言い方をすると、
エロとかエッチなものっていうのは伝達用に使用しているって考えたの、私はね! ねむちゃんはどうかわからないけど」
有村「これはもふくちゃんに聞いてもしょうがないかもしれないけど、被写体の意識として水着と下着の差はあまりないの?」
もふく「差はないと思いますね。女の子ってそういう子が多いと思うし、ねむちゃんも私もそうだし、まったく同じ地平線上でしか考えていなかったの。“素材がちょっと違うだけだよね”って。だって完全に形はいっしょじゃない(笑)!」
有村「そうなんだ! 僕はそこですごく引っかかっていたんだけど、そうなると話は変わってくるな(笑)」
もふく「そこが大事なんだね(笑)。あんまり意識はないです」
有村「そうか……だから“え、下着見せていいの?”っていう気持ちがすごくあったんだよ。あのね、下着のほうがより直接的にエロとしての力を持つわけ。だって水着ってみんな海で着ているし。下着ってもっとプライベートなものだから」
もふく「そうだね。下着は人に見せるようなものではないけど、水着はまだパブリックなシーンで着ることがあるから」
有村「それこそ学校で着たりするしね。じつはそこの違いがとても大きかったわけです。気付かなかった?」
もふく「全然気付かなかった! そうなんだ。だから妄撮のプロデューサーのほうも、あんまり“下着”とか“水着”とか言ってはなかったです」
有村「まあその点に関してはね、僕の書いた記事に対して“童貞くさい!”って言う人もいた」
もふく「でもさ、それは褒め言葉じゃない!」
有村「あとさ、Twitterで僕のブログ記事に言及していたリアル女子高生も“この人子どもなんだねー”って(笑)。めちゃくちゃ気持ち悪がられて、それからその子、3日間くらいツイートしてなかったからよっぽど嫌だったんだろうね(笑)」
もふく「すごいねぇ(笑)。有村ショックみたいな」
有村「でも、僕のブログの記事のブックマークコメントを見ていると、女性で“この記事がなんで悪いのかわからない”って言ってくれる人もいたり。例えば“被写体の親が見たら悲しむんじゃないか”って。そういう人ってやっぱり下着であることが重要なんだよね。水着と下着で完全に差をつけている」
もふく「なるほど。おもしろいですね、この波紋は。じゃあさ、AKB48が前に『わがままガールフレンド 〜おしゃれプリンセスを探せ!』っていう下着写真集を出していたでしょう? 私はあれも結構びっくりしたんだよね。あんなに人気絶頂期の女の子たちが、水着じゃなくて下着姿っていうのが。我々はそれをうたい文句にしていなかったけど、あっちは完全にしていたじゃない? “下着姿のAKB48ですよ!”って」
有村「それはそういう作用を感じたの?」
もふく「感じた。というのも、我々みたいに無意識にやっていたんじゃなくて、アイドルの価値としてある意味今まで守ってきたものを、向こうは完全に利用してきたっていうかさ。それはすごくびっくりした」
有村「そういう、“お前らこういうのほしいんだろ?”感っていうのは『妄撮』にも感じていたんだよね。『妄撮』の存在自体はかなり前から知っていたので。これは余談なんだけれど、最近出た電撃文庫ライトノベルの新刊に、『シースルー!?』っていうタイトルの文庫があって、これがどういう作品かって言うと、主人公の男の子には女子の服が一枚だけ透けて見えてしまうっていう話なんだよね」
もふく「とてもくだらないねぇ(笑)」
有村「カラー口絵を見たら、そのまま『妄撮』のやり方だったんだよ」
もふく「へえ!」

シースルー!? (電撃文庫 あ 31-1)

シースルー!? (電撃文庫 あ 31-1)

有村「これはなんというシンクロニシティだ!と思った。どれだけ俺は妄撮に呪われてるんだ?って(笑)」
もふく「(笑)、でもやっぱりさ、ライトノベルって欲望がすごく表れていると思うんだ。空から女の子が降ってきたらいいのになとか、ツンデレの子がいっしょに住んでたらいいのになとか。一枚だけ服が透けて見えるっていうのも、やっぱりそういうような男の子の欲望だっていうのが否めないんだよね」
有村「僕はその欲望に対する罪悪感が強かったってことなんだよね」
もふく「そうだよね。今回はそれが大きいってことだよ。核じゃないけどさ」
有村「まあそれはほら、散々自分のブログで書いた母親との話なんだけどね。母親は本当にそういうものが嫌いなんだよね」
もふく「それは、“性を感じるもの”についての嫌悪感全般ってこと?」
有村「たぶんそうなんだよね。まあ僕も僕で自分のイラストサイトについてどんなものを開設したかっていうのを母親に見せていたんだよ」
もふく「それはえらいね!」
有村「それぐらい飼いならされちゃっていたんだよね。それでいろいろイラストを載せるようになったらすごく怒られて。“お前らみたいなのが社会を悪くする” って。11年前に、今もある『電撃HIME』っていうエロゲ雑誌にイラストレーターとしてデビューすることになったっていうのを報告したら、“そんなハレン チな雑誌に載るくらいなら、あんたを殺して私も死にましょう”ってメールがきたんですよ。“私たち親子が社会に迷惑をかけて生きる価値はない”って。でも実家に転がり込んだときに知ったんだけれど、親はしっかり僕の描いたものが載った本を買っていたという」
もふく「うれしかったんじゃないの、それ」
有村「だったらなんであんなこと言ったんだ?っていう感じなんだけどね」

有村悠:画

有村「『アキバ妄撮』にいっしょに出ていたメイドの人とかも、水着と下着の区別はつけていなかった感じ?」
もふく「全然つけていなかった。女の子のほうってあんまり考えていないんだよね。最近の子は特に、平気でみんなの前で着替えるしさ」
有村「細かいことを気にするようだけど、女の子が自転車を漕いでるときに、スカートがまるっきり見えてる人がいて、“これはパンツでサドルに乗っているのか?”って思ってTwitter上で問いを投げてみたことがあるのね。パンツで乗っていて気にならんのか?って。そしたらもとよりスカートを履いている人は気にならないって返ってきて」
もふく「うん、気にならない」
有村「そこでまた男女の価値観の違いを思い知ったというか」
もふく「細かいなぁ(笑)。女の子はね、特に最近の子は親の価値観っていうのが大きいと思うんだけど、親の世代もすごく性に対して寛容っていうか、結構自由だからさ。ねむちゃんとかの話を聞いていると、お母さんがすごく応援してくれていて。というか、両親がアイドルとかそういうものをとても応援してくれているんだよね。今回の『アキバ妄撮』も“水着になるでも下着になるでも、とにかく頑張れ!”って。お姉ちゃんも買ってくれているくらいだし」
有村「うちでは考えられないなー」
もふく「やっぱり家庭環境によって下着でも恥ずかしくないって思うんだろうね。でももちろん、恥ずかしいって思う女の子もいるわけだし、そういうものをいけないものだって育てているか、それとも自由に育てているかですごく違う」
有村「それは今回の『アキバ妄撮』に出たディアガールと出ていないディアガールの違い?」
もふく「そうだね。“絶対嫌だ!”っていう子もいるよ。“肌を出したくない”っていう子も中にはいるし、それは親の教育の違いだと思う」
有村「“お前は今の時代に何を言っているんだ?”って言われるかもしれないけど、最初に僕が思ったのは“はしたない”だったんだよ」
もふく「なるほどね。おもしろい」
有村「たぶん今時の女の子からしたら、すごく滑稽に映るのかもしれないね。さっき言った、僕の記事を気持ち悪がっていたリアルJKみたいなね」
もふく「でもやっぱりそういうのって、本当に価値観だからさ。例えば『アキバ妄撮』をイスラム系の国に持って行ったらもう発禁だろうし」
有村「そういえばこの間のイランのサッカー女子代表も大変だったよね。イランって肌を露出しちゃいけないっていうのがあるからさ、そういうことを考慮したユニフォームを着て行ったら、国家を歌い終わった後に“あなたたちのそのユニフォームは規定違反だから出場禁止”って言われちゃって」
もふく「かわいそう!」
有村「まあFIFAから何度も警告されてきたのにイラン側が聞く耳持たなかったんだよね。でもそのタイミングで言うか?って感じだけれど。イラン国内では女子がそんな恰好してメダルをとるのは恥だって言われていたみたいで」
もふく「なるほど、そういう価値観だもんね。やっぱり日本は他の国に比べて宗教観みたいなものがないから、性に対してとか、女の子が下着姿になるとか、変な話、AV女優が世界で一番多いんじゃないの?ってくらいいるよね。あんまり価値観としていけないものっていうのがないんだよ。有村くんみたいな価値観っていうのは他の国に行ったら意外と普通なのかもしれないよね」
有村「キリスト教的な原罪を背負っているみたいな感じなのかもね」
もふく「それはすごく思う。でも日本人だとすごく生きづらいだろうね(笑)。日本って、そういうものが本当にゆるいよね。AVがこんなに出回っているのもおかしいし」
有村「『アキバ妄撮』も一般書店に普通に置いてあるしね」
もふく「“こんなの全然エロくないじゃん!”って言われるし、私も思うからね」
有村「妄撮Pは、“いやーなんだかんだ言ってエロですよね”って言っていましたけど、編集長としてはどうなんですか?」
――この間ねむきゅんにインタビューをしても感じたんですけど、今回の『アキバ妄撮』は妄撮的にはエロくないんじゃないかって思います。と言うのも、本篇の『妄撮』は男目線の日常エロなんですけど、ねむきゅんは自分でこういうのをやりたいってリアルに自分の高校のときの制服や上履きもってきたりして、ある種女子校の学祭みたいな、被写体の主張が結構入り込んでいるんですよね。その女子高ノリは有村さんみたいな人たちに幻滅を与えた理由でもあると思ってて。
有村「女子校で女の子たちが撮り合った下着姿の写真が流出していることがたまにあるんだよ。そういうノリなのかなっちょっと思ったり。ねむきゅんのインタビューにも学祭のことが書いてあったし」
もふく「やっぱりテレビとか雑誌とかで、グラビアアイドルやアイドルとかが水着とか下着の恰好をしているのを“かわいい!”と思って女の子が見るんだよね。みんな下着でもおしゃれなポーズをして、おしゃれな写真になっているから憧れがあるし」
有村「ファッションなんだね」
もふく「そう、ファッション。“かわいいな、下着姿”っていう感覚から、エロっていうものに女の子はあまり直結しないんだよ」
有村「男でもたぶんね、僕みたいにすぐ直結しないと思う。最近ってローライズジーンズって本当にどうでもよくなっちゃって、しゃがみ込むとパンツとか見えたりするでしょう? 僕はあれにエロスを覚えるタイプ」
もふく「ああ、そういうタイプか(笑)」
有村「でもあれもみんな気にしていないんだよね?」
もふく「気にしてない(笑)」
有村「僕がたぶん過剰なんだろうなって。これは僕が見ていいものなのか?って思うんだよ」
もふく「有村くんはそういう“はしたない”って言ったら変だけど、無頓着な女の子って好きなの? 嫌いなの? 理想としては気にしていてほしいの?」

もふく「有村くんに共感している人もたくさんいるけどね。要はサマンサ・タバサの子は妄撮していいけどディアステは嫌だ、みたいな。肉食か草食かっていう。メイドさんには草食でいてほしかったんじゃないかな」


有村「うーん……でも結局そこは僕がどうこう言う筋合いじゃないと思うんだよね。それを見る僕の自意識の問題だからなぁ。そういう自分の理想とかを押し付けるわけにはいかないなって思う」
もふく「そこは意外とあれだね(笑)」
有村「なんかそういうところは父親のほうが肯定的だったのもあると思うんだよね。母親がその反動で厳しくなったというか。小学生のときに父親が単身赴任したまま女を作って逃げちゃって、その頃は母親も相当気が立っていたの。それで僕が何かにつけて怒られるときに言われる言葉が“あんた、お父さんといっしょじゃないの!”だったんだよ」
もふく「ああ、それはお母さんの気持ちがわかるなー」
有村「そこで自分の中の男性性への否定みたいなものが強く植えつけられちゃったのかもしれない」
もふく「わかるなー。私も男性のそういうところ、好きじゃないんだよね。なんていうの、結婚とかに対して理想みたいなものがあるから、男がすぐ若い女に現を抜かしてすぐ離婚とかあかん!と思っているの。だから有村くんのお母さんの気持ちがよくわかるな。そういうトラウマがあって、子どもが特に男だったら、絶対そういうふうに育てたくないって思う」
有村「(スマホを見る)ああー! インタビューズにちょうどこの問題に適した質問が届きました」
もふく「何?」
有村「本当にあおられるなー」
もふく「『エロコスプレ画像集を出している方にヌキました!とかエロかったです!って感想を言うのはセクハラに当たると思いますか? 実際どうなんでしょうか。男として複雑です』」
有村「完全にあおっていますね。たぶん2ちゃんねるの有村スレにも書いてあると思う」
もふく「あー。“エロかったです”は褒め言葉だけど、“ヌキました”はセクハラみたいな。私この間、花邑沙希さんっていうコスプレイヤーの方とお会いしたんですけど、股間を絆創膏一枚だけで隠すっていう、モザイクなしのギリギリ写真集を自分で全部作って、年に2回のコミケで生計を立てている方なんです。自らそういう限界エロみたいなものに挑戦している女の子たちがたくさんいるんだって。その方が言っていたんだけど、やっぱりリアルにお金がなくて、お金の為とか、お客さんに喜んでもらいたい、っていうウケ狙いの為が大きいらしく、“これが一番ウケるんですよ”ってよく言っていて。すごいエンタメ精神。マーケティング で絆創膏かぁ!と(苦笑)」
有村「女性のエロゲの原画家さんとかも割りとそういう人が多いですよね」
もふく「男性のそういう欲望に応えようとある意味エンターテインメントしていくと、ギリギリのエロになるんだよね。それがおもしろいなと思って」
有村「そこでもろにそういう対象になっちゃっているのは折り込み済みなわけじゃない?」
もふく「うん、折込済みなんじゃないかな」
有村「それでもそういう“ヌケる”とかの直接的な感想は入れられたくないってことなの?僕もすごくそこが気になっているんだよね。被写体の子は本当のところ、自分の写真でヌかれてうれしいのか?」
もふく「でも大体そうでしょ。ある意味成功した、みたいなことなんじゃない(笑)」
有村「それはある種の自己肯定が満たされるから?」
もふく「要は認められたみたいな、承認要求の一番わかりやすい形なんじゃない? 逆にそういうふうにあけっぴろげに書く子たちっていうのも、むしろうれしいって子が多い」
有村「“みんなそういうことを考えてるものだよ、ありむーは考えすぎだよ”ってコメントがきていたりしましたね」
もふく「女の子は考え方で随分変わると思うけどね。堅い子は堅いしなー」
有村「インタビューズで僕がフォローしている人で、ヌードモデルをやったりとかしている人がいるのね。その人は“自分は別に後ろめたいことをやっているわけじゃないから、例え自分でヌいた人がいたとしてもそれはその人の勝手である”っていうことを言っていて。今回のことにもつながるなと思った。なんだか僕がひとり相撲をとっている感じがすごくしたけどね(笑)」
もふく「共感している人もたくさんいるけどね。要はサマンサ・タバサの子は妄撮していいけどディアステは嫌だみたいな。肉食か草食かっていう。メイドさんには草食でいてほしかったんじゃないかな」
有村「僕はそういうふうに言う人たちに対して、ジェンダー的にどうなのか?って思うタイプだから、自己批判せざるを得なくなる」
もふく「ジェンダーねぇ。『アキバ妄撮』でまさかジェンダー論までいくとは思わなかった。軽い気持ちでやっていたから」
有村「そこに僕みたいな考えすぎる人間がやってきた、みたいな」
もふく「(笑)、まあそれはすごくよかったんだよ。有村くんみたいな感覚を持っている人って、オタクって呼ばれている人たちの中にはすごく多いし。私は逆にわからないのが、そういうエロいものに対して嫌悪感とまではいかなくても、嫌な気持ちがあるわけじゃない? でも有村くんとかも、二次創作のエロっていうものが大好きなわけでしょう。それはどういう差なの?って思うの」

有村悠:画
有村「その点に関してはね、僕自身に関して言えば、現実のほうで駄目なところを、二次創作で放出しているんじゃないかって思うんだよね」
もふく「それはさ、すっごく簡単に乱暴に言っちゃうと、三次元は怖いけど二次元は大丈夫っていう気持ちがあるの?」
有村「どこかであるんだろうね。僕の中にはどこかに女性恐怖みたいなものがある気がするんだよ。最初は母親に植え付けられた恐怖だと思うけど」
もふく「じゃあ『アキバ妄撮』がさ、まったく同じ構図でまったく同じものが二次元だったら全然平気でしょう?」
有村「うーん……まあ、まさにさっきのライトノベルだけど、こういう話に触れてしまった後ではどうだろうなぁ。今の話も僕は描き手が女性だと話がすごくこじれるんだよね。そこで“はしたない”って話が出てきて複雑になるわけ。同時に“別に女性がエロを描いてなんで悪いんだ?”って割とリベラルな話になって、自分が真っ二つになる感じがしてすごく葛藤して寝込んだりする」
もふく「そこらへんは本当に複雑なんだろうなぁ。でも有村くんがそこまで評判を集めたり人気があるっていうのは、同意している大多数の方がいるからだと思うんだよ。どこかに有村くん的なところを持っているからで」
有村「割とそういう反応は多いですね」
もふく「そういうのってすごくアキバ的っていうかさ、コミケとかで感じるよね。でもコミケとかに来ている男性だって、女の子が好きなんですよね。怖いって言いつつも、結局は女の子が好きでしょう。でも、そこがこちらとしてはとまどいポイントだったりして。目を合わさないで同人誌とかを買っていくけど、じつは横からずっと見ているみたいな(笑)。見たいの? 見たくないの?っていう。それがいじらしくて好きではあるんですけど」
有村「どっちかって言うと、見てもいいんですか?っていう感じなんですけど。見ても怒られないかな?とか」
もふく「みんな相当トラウマがあるんじゃないの?」
有村「風潮として、痴漢冤罪とかがあるから“女って怖いわー”って言っている人が多いですよね。女といっしょに電車に乗ったら何されるかわからない!みたいな」
もふく「だから究極に言えば、オタクもすごく女の子が好きなんだろうなってことなんですよ。アイドルを商売にしていると、お客さんの中には少なからず有村くん的な考え方の人っているわけで。アイドルは処女でなければならないとか、無垢でなければならない。性に関して“0”でなければならないっていうのがあるんですよね」
有村「個人的にはね、そういう思想にとらわれないでいたいっていうのがあるんですけど、どうしてもどこかに残っているなって」
もふく「アイドルがどこかのプロデューサーとお泊りにゃんにゃんってって出たりすると“こいつもかー!”ってなるでしょう?」
有村「そういうのを見ると、“いや、そんなのはアイドルの勝手だろ!”っていう論陣をよく張るんですよ、僕は。でもその一方でこう……」
もふく「複雑なんだな(笑)」
有村「だから僕を見て、そういうメンタリティでフェミニストを気取るのは大変だろうなって言ってきた人がいて、ぐさりときましたけど」

もふく「『かんなぎ』の主人公の“中古騒動※”にしても、処女=神とか、アイドルは恋愛しちゃいけないっていう思想は、絶対日本人の男性の中にはあるんだな って思う。今回の場合は、ねむちゃんが自分から選択して、妄撮をやったっていうことをインタビューとかでも言っているのが結構なとまどいを呼んでいるのかなと」
※『かんなぎ』の主人公・ナギが原作漫画で非処女(中古)だということが判明して大騒ぎになったこと。

もふく「二次元でもそういう騒動があったじゃない? なんだっけあれ」
有村「『かんなぎ』?」
もふく「そうそう。ナギさまは二次元であろうとも元彼がいた。つまり処女ではなかったってわかった瞬間にグッズは燃やす!みたいな(笑)」
有村「あれはね、半分は2ちゃんねる特有のノリでできているけど」
もふく「祭りだよね。でも中には本気でそう思っていた人がいるんだよ。そういうのを見ていると、性に対する嫌悪感とか、処女=神とか、アイドルは恋愛しちゃいけないっていう思想は、絶対日本人の男性の中にはあるんだなって。女の子が水着になったり下着になったりするのはあくまでも女の子の意思ではなくて、プロデューサーにやらされているものとされてきたから、プロデューサーは嫌われ役で、“俺の○○に水着を着させるなんてひどい!”って。じつはアイドルの本当にコアなファンは水着とか嫌がるんですよ。女の子は無理やり着させられていて、本当は嫌なんだっていう妄想をしたいんですよね。今回の場合は、ねむちゃんが自分から選択して、妄撮をやったっていうことを言っているのが結構なとまどいを呼んでいるのかなと」
有村「それがさっきの女の子の意見ですよね」
もふく「男の子としては“本当はやらされているんでしょう? かわいそうに”って言いたいんですよね。でもそういうのがこっちはとまどいがあって」
有村「もふくちゃんとしてはすごくノリノリでねむちゃんに協力したと思うんですけど、それはそういうものだとして、なんでそうなの?って思ったりして」
もふく「すごくわかる。だからそこにとまどいが生じるんですよね。なんか歪みというか。要は“俺たちのことを意識して誘ってきてるのか!?”っていう恐怖感 だったりとか、理解できないっていう気持ち。そういうのは賛成・反対の意見を見ていると、反対の意見の中にたくさん受け取ったんだよね」
有村「恐怖感だよね。僕なんかはもう、心臓がバクバクして冷や汗が出て。体に直接出るの。その時点ではすごく思い詰めていたからね。思い詰めていたからもふくちゃんに電話したんだけど。具合が悪くなって話せなくなったらストップしていいですか?って」
もふく「やっぱりそういう人はいるだろうけど、面と向かって本人には言えないですよね。ねむちゃんには“よかったよ”って言っておいて、後ろではじつは涙っていう」
有村「そういうファンに対する思いっていうものはあるんですか?」
もふく「本当に身近なファンにとっては複雑な心境もあるかなって思いつつも、私の中でですけど、『アキバ妄撮』はアキバ外の人にいかに見られるかっていうのがあって」
有村「そういう意味ではかわいい女の子は強いってことですよね」
もふく「エロは強い。やっぱりエロっていうものは売れるんだよなぁ」
有村「もふくちゃんはそれに対して不思議な感覚とかあるの? さっき絶望したとか言っていたけど」
もふく「ああ、不思議な感覚はありますよ。ある意味予想はしていたけど。“やっぱりエロはいけるな”って(笑)。今までやってきていなかったから初めての反応でもあったし、私の周りの人でも、水着だったり下着だったりになっていたら買うっていう人が不思議だったな」
有村「そのへんの見透かされている感が嫌だっていうのもある」
もふく「それはそうだよね」
有村「どこか挑発されている感じがあるんだよね。そこをアイドルとか身ひとつで闘っている女の子の戦闘的な姿勢が好感が持てるっていうアイドル好きの人もい るし。そういう人たちがたいてい僕のブログを見て何か言っていたんだよね」
もふく「本当に波紋を呼んだよね。やっぱり有村くんの文章はさ、他の人が心の中で思っていることを書いているから人気なんだよ。ああいうことを思っている人っていっぱいいると思うけど書かないし、まあ文章力がないとかいろいろ問題はあると思うんだけど、有村くんレベルに文章が書けて、おもしろくて、正直に隠さないで書くっていうのが人気の秘訣だし、それはずっと続けてほしい」
有村「仕事に支障が出るかもしれないけどね(笑)。なんでそんなにわかりきったことをやるんだっていう意見もあるし」
もふく「でもそれって大事でさ、わかりきっていることとか、大多数の人が思っていることを代弁する人っていうのがいないじゃない?」
有村「それを言語化するのは意味がないわけはないとは思うけど」
もふく「そう思うでしょう? だってニコニコ動画とか2ちゃんねるとか、だいぶ我々の世代では一般化しているけど、まだまだ日本全体で見たらニッチっちゃニ ッチなんだよ。流れも速いし、ハイコンテクストだよね。だから一般の人は理解できないし、こういうマインドなんだって思うし。2ちゃんねるを見ていない人は、そういう有村くん的な考え方をしている人がいるってことすら触れないし、ある意味翻訳家でもあるんだよね。そういうアキバのメンタルを語っている有村くん を見て“うわ、キモい!”っていう人ももちろんいると思う。それは世間一般のオタクに対するものだし」
有村「基本的には考えすぎの人間だからね(笑)」

『アキバ妄撮』で好評だったもふくちゃんと安全ちゃんの対談イラストも夢眠ねむ画(『アキバ妄撮』ではカラー版を掲載)
もふく「みんな深層心理では考えてはいるんだけど、言語化していないんだよ。でも有村くんってさ、そこまで言語化して自分自身のことをよくわかってるじゃない? なのになんで落ち込んだり病んだりするのかがわからない(笑)。わかってるじゃん! もういいじゃん!って思う」
有村「まあ、わかったことで解決するなら世話ないよってことなんだと思う。いかんせん長年培ってきた思考なので、そう簡単には変えられないし。どこかで、こういうことに反応している自分を俯瞰して“ああ、またこんなことやってるなー”って思ってまたそれを文章化している自分っていうのがいるんだよ。制御できな い暴れ馬を傍観している人っていうか。もうおっしゃるとおりだと思います」
――ねむちゃんが『アキバ妄撮』発売以降、ディアステージに女の子ファンが来るようになったって言っていましたけど、どうですか? やっぱり違いますか?
もふく「そうですね、女の子ファンがすごく増えました」
有村「その人たちも何か代弁してもらった感じがあるのかな?」
もふく「あるのかもね。やっぱりそういう意味で最近の女性は肉食化って言ったら変ですけど、強いですよね。アニメの主人公なんかでもそうで、ツンデレ化していってるし」
有村「ツンデレっていうか男を振り回す感じの」
もふく「そうそう。男は草食で女の子のほうがむしろ誘うみたいな」
有村「そういう女性主人公には結構女性ファンって付くよね。すごく古い例で言うと『スレイヤーズ』とか」
もふく「そうですよね。『スレイヤーズ』自体ってそんなにまだ主人公自体がエロくなかったけれど、最近のアニメはエロに対してもすごく積極的で。勝手に主人公の部屋に転がり込んじゃうとか、毎晩女の子のほうから誘ってきてそれを男の子が断るのが大変だっていうのが本当に多くて。そういう意味だと、女の子のほうから脱いじゃうとか、誘うとかになっていっているのかなと」
有村「そういう子に付くファンっていうのはアキバ系なの? それとも、外へ向かって出した結果、違うファンな感じ?」
もふく「うん、そうですね。アキバ系はもちろん多いですけど、最近はサブカル好き!みたいな女の子も多いですね。でも最近のサブカルファンっていうのは必然的にアイドルファンにもなっているので、そのへんのジャンルの子たちとか。アイドルも嗜んでいるし、昔のオリーブ少女っぽいのかも。だからアイドルも最近、徐々に女の子狙いにマーケティングをだいぶ変えてきていると思うんですよね」
有村「そうだね。相当強い女子を全面的に押し出してきてはいるよね」
もふく「うん、歌詞もそうだし。最近のアイドルはみんなそうなんですよ。男に媚びないっていうか、むしろ“僕”っていう歌詞が出てきたり、打ち勝つみたいな ところがあるんですよね。『ヘビーローテーション』の出だしも“ワンツースリーフォー!”ってすごく声が男らしいし。強い女性っていうギャップ萌えなのかな。私の場合は完全にギャップ萌えで、強くて儚いものに惹かれるんですよ。少女って弱いものじゃないですか。でもじつは強いとか、空手何段だっていうのにすごく憧れがありますよね。だから最近のアイドルのそういう強いところとかすごく共感できるし、好きです」
有村「やっぱり秋元康さんは80年代からやっていますもんね」
もふく「でもおニャン子クラブはまだ媚びていたと思います」
有村「それでも、時代とともに姿を変えていっているのはうまいなと思いますよね」
もふく「男の欲望を理解しきっているというか(笑)」
有村「秋元さん自身は割りとナイーブですよね。女の子に告白できねーって言ってる男の子を女の子が歌っているし」
もふく「歌詞は移り変わりがありますよね。最近のAKB48ももいろクローバーは本当に力強いし」
有村「ももクロかぁ」
もふく「今おもしろいのが、ロックバンドの歌っている歌詞と、AKBとかももクロが歌っている歌詞のどっちがロックかって言ったらよくわからなくなってきていて。ヒップホップやロックバンドの人とか最近は、友愛、家族愛とかよく歌うじゃないですか。それでとなりを見るとアイドルが“全員ぶっ潰す! ひたすら前へ進む! 革命!”みたいなことを歌っていたり(笑)」
有村「僕のブログの記事に対してのブックマークコメントがいくつかきていますね」
もふく「みんな熱いよねー。でも今いくつかコメントにあったけど、すごく馬鹿にしている書き方が多くない?」
有村「僕自身、“ズリネタ”いう言葉を使ってしまったことに対して申し訳ないなって気持ちがあるんだけど」
もふく「いやいや。やっぱりそういう言葉を使う人って、性に対する嫌悪感があるんだろうね」
もふく「今日有村くんのインタビューを聞いて、自分が何をしたかったのかがわかりましたね。流れ作業的に無意識的だった部分もあったように感じていたけど、
ひとつひとつで考えてみると、やっぱり自分の中にもテーマがあって」
有村「僕はね、人が流れ作業でやっていることに対していちいち引っかかってしまうんですよね」
もふく「スルースキル0みたいな(笑)」
有村「そう、何にもスルーできない」
もふく「人間って大体はスルーしながら生きているんですよ。それをいちいちぶつかっていくもんね。それで血まみれになって寝込んで、また回復したら突っ込む
みたいな(笑)。まあ、有村くんには頑張って生き抜いてほしいです」
有村「なんでこういう話をしていると、大体僕が励まされて終わるのかなー」
もふく「あはは(笑)! 確かに毎回そう」

FREECELL特別号 アキバ妄撮    62484‐01 (カドカワムック 397)

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