吾妻ひでおの「失踪日記」やカート・ヴォネガットの「スローターハウス5」が好きな方はぜひ! ”災厄への耐久力”をヲタ主婦目線で描ききった、オンリーワンの震災体験まんが!!槻月沙江(きづき さえ)「震災7日間」8/27発売!!!
仙台市在住の同人まんが家・槻月沙江(きづき さえ)が自らの震災体験をまんがドキュメンタリーとして綴った
「震災7日間」。
主婦目線、ヲタ目線での震災体験まんが、という個性あふれるこの作品は、発表時からさまざまな出版社から単行本化の話が
ありましたが、縁あって弊社から発行、角川グループパブリッシングから8/27発売ということが決定しました!
今回は単行本版「震災7日間」について編集・発行人の立場からこの作品の出版意図について話したいと思います。
単行本版「震災7日間」は、A5判全128ページ。
pixivにアップされ既に10万人弱の人が読んでいる「震災7日間」のペン入れ完成版と、その後日譚である「実家は通常運転」「震災一ヶ月」
の「震災7日間」の連作。
pixivにアップされている「震災7日間」
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=17905695
それと、10代から20代前半を商業まんが誌でのデビューを目指し「投稿まんが家」として活動するも、商業誌でのデビューを断念、
以降、結婚・出産し生活拠点の仙台で新聞や広告で地味な受注まんが仕事をひたすら描き続けてきた筆者の実体験に基づく"成功しないまんが道"
「一進一退まんが道」の描きおろし61ページで構成されています。
こちらは「一進一退まんが道」の源流といえる、まんが家志望者のために自らの実体験に則して「入賞できる投稿まんがづくり」を
研究をしている槻月沙江の個人サイト「まんがみち」
http://www002.upp.so-net.ne.jp/saesae/home/
まんが「震災7日間」で印象的だったのは、大地震が収まったのち、槻月沙江が取った冷静な行動(ダンポールを床に敷いて
壊れたガラスなどで足を傷つけないようにする。これからの過酷な日々に対抗するため、余りものですぐ食事、携帯はすぐ繋がらない
だろうから電源切れを防ぐため電源オフなど)ですが、その"災厄への耐久力"は、じつは彼女が過去に体験してきた数々の苦難から
培われていたことが今回この本のために描きおろしてもらった「一進一退まんが道」からわかります。
ブクログで公開されている単行本「震災7日間」収録の「一進一退まんが道」
http://p.booklog.jp/book/31696
精根込めてがんばって描いた受注まんがは、土器の発掘自体がじつは以下のような捏造だったことがわかり仕事としての「意味」を失う。
その他にも槻月沙江の「まんが道」はいつもけもの道。まんがを愛してまんがが描けるなら、とプライドを捨てて下層まんが家としての
仕事を引き受けているのに、なぜかいつも愛して止まないまんがから傷つけられてしまう。
槻月沙江のすごいのは、それでも筆を折らなかったところ。
単行本の「一進一退まんが道」の後半のくだりを読んでいると、ひょっとした彼女は30代後半になっても「まんが家として生きる」という大望を
捨てないためにまんがに理解がある夫を選び「ヲタ主婦」というポジションを創ったのでは? と思えてきます。
こういう夢を捨てずに、いつまでも夢を傍らに生きる生き方はよいな、と。
そして、東日本大震災を個人目線で描いた「震災7日間」が大きな支持を集め、こうして単行本化されることは、槻月沙江と同じく、すごく好きなものがあって
自分も好きなものに関わる生業をしたいと願い、トライするも、叶わず、好きなものに傷つけられてしまうたくさんの人にとって大きな励みになるのでは、と思います。
この世界の人間は約1300万人。それだけ大勢いて誰ひとりエキストラじゃない。
皆それぞれの人生の主役だ。出番を必要としている。
これはチャーリー・カウフマンの映画「脳内ニューヨーク」の中のセリフですが
槻月沙江の「震災7日間」が伝えているのは長い出番待ちの間も腐らず”自分の出番”のための準備を怠らないことの大切さでは、と。
残念ながら、震災本は売れないというのが今定説化していて、初版部数が少ないので、ひとりでもたくさんの方にご購読
いただき、槻月沙江の「まんが道」に新しい展開が訪れることを発行人として期待しています。
- 作者: 槻月沙江
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2011/08/26
- メディア: 単行本
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個人的には吾妻ひでおの「失踪日記」やカート・ヴォネガットの「スローターハウス5」などの災厄や修羅場を達観したユーモアで見せていく作品が
好きなのですが、「震災7日間」も困難への耐久力を著者独自の”救いのある自虐芸”で一貫してみせていて、読了後は不思議と癒されます。
同じような読書傾向の方はぜひご一読ください!